味の素食の文化センター発刊 Vesta(2017冬) で紹介されました

歴史的な町並みを鮭が彩る風景 越後村上鮭塩引き街道

歴史的な町並みを鮭が彩る風景 越後村上鮭塩引き街道

歴史的な町並みを鮭が彩る風景 越後村上鮭塩引き街道

はじめに
新潟県村上市は、冬場には塩引きサケの産地として賑わいを見せる。
『日本の伝統食品事典』(朝倉書店二〇〇七)の「サケ干物(塩引き、酒びたし)」の項では、冒頭で「新潟県の村上地方では、昔からサケを特に珍重しさまざまな料理方法により余すところなく利用している。」とあるように、塩引きサケなどの産地として名高い地域である。
今回は、歴史的な町並みを季節の風物詩である塩引きサヶが彩る風景と共に紹介したい。
今回の取材は、新潟大学の黒野弘靖准教授にご案内いただいた。

寛永年間(一八〇〇年頃)にサケの元売りを始めたという老舗の「越後村上うおや」を見学した

寛永年間(一八〇〇年頃)にサケの元売りを始めたという老舗の「越後村上うおや」を見学した

鮭を干す
伝統的な保存食として、天日干しされた鮭が食されてきたことは周知の事実であろう。
鮭トバなどは、酒の肴として多くの人に嗜好されている。よく知られるのは、アイヌ民族とサケの関係で、白老町のアイヌ民族博物館では観光用にチセ(復元民家)の軒下や櫓に干されたサケのある風景を見ることができる。
山形県鮭川村では、近年、民家の軒下にサヶを干す様子が見られるようになった。干したサケは、北国の保存食という印象が強い。
これらは、草葺きの民家や簡易な櫓で干されるが、村上市では町屋の建ち並ぶ城下町の町並みの軒下に干されるという特徴がある。
かつては、北国の宿場町等の町屋で見られたかもしれないが、今では村上市の例は貴重な存在となった。
村上市の天日干しの鮭には、大別して塩引きと酒びたしの二種類がある。二種類は、熟成期回の違いによって呼称が使い分けられている。
産地としては、村上市の他、岩手県や北海道なども知られている地域である。
鮭の加工
筆者は、寛永年間(一八〇〇年頃)に鮭の元売りを始めたという老舗の「越後村上うおや」を見学した。
ここは、塩引き鮭の季節には、自由に見学することができる。

ここは、塩引き鮭の季節には、自由に見学することができる

ここは、塩引き鮭の季節には、自由に見学することができる

塩引き鮭は、生のサケを洗浄して腹から内臓を除去し、洗浄後に塩をよく擦り込んで、一週間ほど桶で漬け込み、その後は流水で塩を抜いて、寒風で天日乾燥させるという工程が一般的である。
天日乾燥を二週間ほど行うのが塩引きサケ、更に半年ほど乾燥させて生じた独特な風味を一緒に楽しめるのが酒びたしである。
作業場の人目は、厨子二階を持つ現代的な町屋のような佇まいだが、背面に工場が建つ。
作業場では発送の準備をしていたが、背面の工場では天井に大量の鮭がところ狭しと吊るされている。
天丼には、並行に取り付けられたピクチャーレールのようなものが四本付き、そこに鉄棒を渡して二箇所の干し場を設けている。
その棒に、尾をワラ縄で縛ったサケが吊るされている。
丁二階の天井(床)は、中央部が一部賓子になっており、二階の外部に面した窓は建具が外され、網を張った状態で全開放されている。
これによって、建物内に外気を取り込み、冷気が一階へと下がることを利用して、建物全体が冷蔵乾燥室の状態となる。

越後村上うおやの「鮭こうば」

越後村上うおやの「鮭こうば」

越後村上うおやの「鮭こうば」。
風通しの良い造りとなっている。

お土産用の「塩引鮭」

お土産用の「塩引鮭」

お土産用の「塩引鮭」

新潟県村上市は、冬場には塩引き鮭の産地として賑わいを見せる。

新潟県村上市は、冬場には塩引き鮭の産地として賑わいを見せる。

筆者は、寛永年間(一八〇〇年頃)にサケの元売りを始めたという老舗の「越後村上うおや」を見学した

筆者は、寛永年間(一八〇〇年頃)にサケの元売りを始めたという老舗の「越後村上うおや」を見学した