越後村上うおや

村上甚句

諦めて 酒でも呑んで 白川夜船で 寝たも良い

赤い切れかけ(ふくりかけ)島田のうちは 何で心が定まろうや

諦めて 酒でも呑んで 白川夜船で 寝たも良い

あまりつらさに 出て山見れば 雲のかからぬ山はない

現れまして 首渡しょとも(三度の食 二度食べようとも) イヤしかけた間男 止められぬ

いつも来もせぬ この綾錦(あやにしき) 丈がないので 結ばれぬ

今も鳴る 正午の鐘は 古い城下を思わせる

唄えと 責めたてられた 唄が出ないで 汗がでる

唄の出何処は大町小町 唄とうて流すは下小町

梅は岡本 桜は吉野 蜜柑紀伊国 栗丹波

大きな魚 おらが釣り上げた 川原柳の下流れ

大町衆にゃ 限るではないが いやお酒の呑む人 どなたでも

(裏の三度豆)お三度豆 筍入れて 落とし玉子は なおよかろ

和尚様に帯買うてもろた イヤ品がようて柄がようて勿体のうて締められぬ

和尚様に ゆもじ買うてもろた イヤ 幅がようて 模様がようて 勿体のうて締められぬ

押せ押せ 村上の船頭 押せば瀬波が近くなる

押せ押せ 新潟の船頭 押せば新潟ヤも 近くなる

お茶は水がら 子は育てがら 下女とはさみは使いがら

お寺の前で 音頭取ったおなご 年は若いが(わかいども)唄上手

男情なし この博多帯 とかく丈がない切れたがる

踊らば 今夜限り 明日の晩から 踊りゃせぬ

(踊り)くたびれた 藁草履切れた 明日の浅草 なじょにしょや

踊り子 何故足袋履かぬ 履けばよごれて底切れる

躍ろうば 今夜だに踊れ 明日の晩から 躍られぬ

お前様に 七分通り惚れた あとの三分は想うてくれ

お前さんに 限るではないが イヤ お金のあるひと どなたでも

お前さんに 何言われたとても 水に浮き草根に持たぬ

思うて通えば 千里も一里 逢はで戻ればまた千里

面白うて 足が地に着かぬ イヤお狐コンコンでもついたか見てくれ 頼む(とのさ)

面白うて 足が地に着かぬ イヤお狐コンコンでもついたろうか(ついたやら)

親の意見と なすびの花は 百に一つも 無駄はない

お(城)山から 粟島眺め 心浮き橋かけて見る

俺とお前は 御門の扉 朝に別れて 夕に合う

鍛冶町から 鍾馗さま出ても イヤ肴町通いは止められぬ

上総(かずさ)ヤは 木綿の出処 兎角丈がないで切れやすい

鐘を叩いて仏様であれば イヤ鍛冶町若い衆はみな仏

髪は本田に結うてはみれど 心島田に結いたがる

通うてくれ 霜枯れ三月 花の三月 誰も来る

河内様 よく聞き分けて 二度と頼まぬ 今一度

可愛うて良うて 目が離されぬ これが他人だと 思われぬ

皮ら毛だと 御諸願掛けた イヤお鎌で刈るよな 毛が生いた

雲に架け橋 霞みに千鳥 お呼びないこと おしゃんすな

来るかやと 上下ながめ 川原柳の 音ばかり

下渡羽下の淵 どこの在郷だと思うな イヤ村上五万石目の下に

下渡山に お振り袖着せて 奈良の大仏様婿にとる

来いとおじゃれば 身はどこまでも 下は南部のはてまでも

鯉の滝のぼり 何と云うてのぼる つらいつらいと云うてのぼる

郷内おんちゃ 曲がりがね呑んだ のどにはばけないでよく 呑んだ

声の枯れるのも 身のやつれるも みんなお前のためだもの

声の出ないとき 馬のケツツビなめれ 馬のケツツビからスコタンコタンとコエがでる

(こころ)せけども 今この身では 時節待つより他はない

(腰に)ひょうたん下げ 相の風吹けば 飛んで行きたやお滝様

こぼれ松 手でかきよせて お前来るかと 焚いて待つ

在郷のとっつあ モッコにかて飯 ほうの葉に握り飯 親の代から一代二代三代伝わる

桐の木ずんぐり あかつか煙草のこ臭いところをこてこてと詰めた 山辺里馬市 馬買いに

下がりの藤 手は届けども 人の花なら見たばかり

鷺の首 べらぼのように長うて イヤおまえさんと寝た夜の 短さよ

五月節句は 蓬(よもぎ)に菖蒲(あやめ) わしは 御前にのぼる鯉

山辺里橋 真ん中から折れた 今にどの橋渡ろやら

してもしたがる 十六七娘 親もさせたがる 繻子(しゅす)の帯

島田まげ 蝶々が止まる 止まるはずだよ 花だもの

しゃきとしゃあれ のげはばたしゃたと あじなものだよ きせるさし

しょったれかか なべでけっつあろた イヤいけとっつあたまげて おはちでふんどしあろた

白と黒との 碁盤の上で せきを争う浜千鳥

城山から 大川みれば 流れまかせのいかだ乗り

城山から 川口見れば お滝不動 鉄の橋

城山から 下見下ろせば 茶摘み桑摘みたのしげに

城山の あの頂へ 金のしゃちほこ かざりたや

(せめて)すずめの 片羽欲しや 飛んで行きたや お滝様

雪下駄の 裏打ち金よ なるもならぬも金次第

千松山 そよ吹く風は 流れ流れて滝不動

大工さんとは 名はよけれども 真の心は曲がりがね

大仏様 横抱きにして お乳呑ませた親みたや

出せ出せ 出さねば破る 娘出さねば 壁破る

出せとは俺から言わぬ お前こころにあればこそ

例え(胸に) 千把ャの 萱焚くとても 煙ださねば 人知らぬ

月は傾く東は白む 踊り連中も ちらほらと

出た出た 今朝出た舟は 波に押されて磯廻る

出て行く 煙が残る 残る煙が 癪となる(癪の種)

寺の前で 音頭取った女御 なりは小さいども 唄上手

天守のやぐらの お羽黒様は 七日祭の十日の湯立親にかいても見にござれ

どうでもしやんせ どうにでもなる私 お前任せたこの身

どんどうと(どんどこやあと) 鳴る瀬は何処よ あれは瀬波の お滝様

どんぶり鉢 落とせば割れる 娘島田は寝て割れる

(バカ)長い町だ 足駄カンコで通うた 金の足駄もたまりゃせぬ

ならべておいて たてじまきせて どれがあねちゃやら おばちゃやら

並べておいて 縦縞着せりゃ どれが姉やら妹やら

縄帯締めて 腰には矢立 瀬波通いは止められぬ

新潟ャの 川真ん中で あやめ咲くとは しおらしや

(主と)別れて 松の下通れば 松の露やら 涙やら

寝むられないと 夜中さなかに起きて 人目忍んで 神頼み

羽黒様から お滝様見れば 出舟入舟 帆掛け舟

花のようなる 宝光寺様に 朝日さすまで 寝てみたや

一夜は緞子(どんす)の枕 あすは浮き舟波枕

踏め踏め踏め 角力取るときは 土俵へこむまでドンと踏め

ぼっこれても 骨離れても わたしゃ要(かなめ)で止めておく(止め木する)

惚れて見るせいか 乱れし髪も 金の瓔珞(ようらく)下げたようだ

盆だてのんに 何着て躍る 笹の葉でも着て 躍りガサモサと

盆の十六日 暇くれと願うた ササゲ和え物鉢 取って投げた

(盆の)第三日 暇くれと願うた ササゲ和え物鉢 取って投げた

盆も過ぎれば 十五夜も過ぎる 露に放れたきりぎりす

待ってくりゃんせ 血が出て困る イヤ紙でも夾めめましょ 草鞋くい

ままよ滝田や 高雄でさえも お呼びやせぬぞえ 紅葉狩り

○○衆に 限るではないが イヤお金のあるひと どなたでも

三面川 水晶のような流れ 玉の瀬の音さらさらと

三面川 宝の蔵よ あれを見やんせ 鮭の群

三日月様 何故細々と 細いはずだよ やみあがり

むすめ 島田に 蝶々が止まる 止まるはずだよ 花だもの

むすめ 十六七 抱き頃寝頃 イヤおっちょこちょいとまくれば 会わせ頃

むすめ 十六七 渡し場の船よ 早く乗ってくりゃんせ 水が出る

娘十六 ササギの年よ 親もさせたがる 針仕事

村上 色香の町よ 堆朱堆黒 茶の香り

村上だよ 良い茶の出どこ ならび鮭川 山辺里織り

村上は 良い茶の出どこ 娘やりたやお茶摘みに

村上は 良い茶の出どこで のぼれば葡萄のぶどう酒(さけ)と 

下れば松山温泉だ ならび鮭川 山辺里織り

もっくらがして 親衆に見せた 親衆ぶったまげて 嫁捜す

もっともだよ 御行様さえも おやま掛け掛け めろめろと(ねろねろと)

揉めや揉め 揉まねばならぬ 揉めば茶となるお茶となる

  


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